ガーランドはウォーリアオブライトの左手を取り、薬指をそっと撫でてから武骨な指で小さな金属の輪をはめる。
節くれ立った太い指は、まさに変幻自在の大剣を扱う大男に相応しいもの。
無造作に、それでも己を傷つけぬよう短く切りそろえられた爪が鎧を介さない生身の肌に触れる。その心地良い体温に、ウォーリアオブライトはそっと目を閉じた。
「わしの命を、貴様に一生捧げることをこの指輪に誓わせて欲しい」
大きなかさついた両の手が、指輪を覆うようにゆっくりと力強く左手を包み込んだ。目を開けると、ヘリオドールの優しい光がウォーリアオブライトを映し出す。
まるで太陽のような力強い金色だと思った。
「……それならば、私からも願いがある」
「何だ」
ガーランドの手を上からそっと撫でて解かせると、ウォーリアオブライトは先ほど自分にはめられた指輪を丁寧に外し、ガーランドを正面から見つめた。
「お前がその命をこの指輪に込めるというのならば、私はこの心をこの指輪に託そう」
記憶も感情も、何も知らなかった自分にすべてを一つずつ教えて作り上げてくれたその心を。
「お前の人生に光を照らし続けると、この指輪に誓う」
慈しむように微笑むその顔は亡き女神を思い出させた。そうして恭しく膝をつき、ガーランドの左手の薬指に優しく口付ける。
慎重に指輪をはめるウォーリアオブライトの指先も決して細くきれいなものではなかったが、ガーランドには一連の動作がまるで永遠の幻のように思えるほど美しく見えた。
「……しかし貴様に誓ったこの指輪をわしがまたはめてどうするのだ」
「それもそうだな。しかし、そうなると私は何に誓いを込めれば良かったのだ」
「……すっかり出す機会を失ってしまったが、これが貴様の分だ。まさかわしに返されるとは思ってもみなかったぞ」
「すまない。では、もう一度」
「もう良い愚か者め」
まだ反論しようとするその唇を、ガーランドは強引に塞いだ。
温かな口内をとろりと舌で味わうその幸福は、深き輪廻の中では決して味わうことのなかったもの。
何かに縋ろうと伸ばされたウォーリアオブライトの手を取り、そのまま己の背に回す。その手はガーランドのうなじを優しく撫で上げ、そのまま頭部を包み込むように置かれる。温かな彼の体温に混じった冷たい金属の感触が、じわりとガーランドの心に熱を残した。 |