目の前に整列する幼年騎士団の中に、一瞬で彼を見つけた。
まだ柔らかな丸い頬と未熟で華奢な身体に釣り合わぬ獰猛な眼差しでこちらを見る少年を、ウォーリアオブライトが見間違えるわけがない。
「以上をもって、幼年兵の入団式を終了とする!」
壮年の騎士の一言で入団式は終わり、幼年兵たちは各々の宿舎に戻ることとなる。
だが、ウォーリアオブライトはその少年を追わずにはいられなかった。
「聖騎士ライト様、どこへ行かれるのです」
「心配ない、直ぐに戻り鍛練に合流すると皆に伝えよ」
「は!」
聖騎士の臙脂色の外套を翻し、美しい青年はその場を後にする。
もし本当に彼だとしたら。
どれほどこの日を待ち続けていたのだろう。
少年は集団から少し離れて後ろを歩いていた。
記憶にある猛々しい背中とは随分かけ離れているが、少し骨の出た首の筋も、少し平たい耳も、何よりもその歩く後ろ姿がかつての姿と重なって懐かしさに胸が締め付けられた。
自分を命を懸けて守るのだと常に先立って歩いていた背中、未だ知らぬ世界も多かろうと共に歩んでくれたその歩調。 忘れるはずもない。 ウォーリアオブライトは込み上げるものを努めて冷静に抑え込みながら少年との距離を詰める。
「君は、良い目をしていた」
少年は突然話しかけられても微動だにせず、ゆっくりと足を止め振り返る。光に透き通るヘリオドールは、臆することなく光の戦士———この国の聖騎士と呼ばれる青年を捉えた。
「貴方は、……」
「驚かせてすまなかった、私は古くからこの国の聖騎士をしている」
「いいえ。それより、先程の剣舞、とても美しく力強いものを感じました。いつか、必ずや貴方のお力に……!」
「それは楽しみにしていよう。……君に出会えたことを、とても幸せに思う。では、これにて」
幼い目はまだ会話を望んでいたが、ウォーリアオブライトは彼が頷き礼をしたのもあまり視界に入れぬよう踵を返した。
(これ以上は、いけない)
必死に繋ぎ止めた思いが、こぼれ落ちてしまいそうになる。
かつて騎士中の騎士と呼ばれ、コーネリアで一番の聖騎士に育った彼のその姿が———己が一番よく知る愛しい姿が鮮やかに記憶から蘇り、思わず込み上げた熱を殺すように瞼をきつく閉ざした。
「ガーランド……お前はまた、私のもとに廻ってくれたのか」
左に携えているバーバリアンソードの柄を、そっと力を込めて握りしめる。そこにはいつの日か忘れた昔に二人で交わした指輪が埋め込まれていた。
金属は硬く冷たいままであったが、久しく触れていなかった温もりがそこに僅かに戻ってきたような気がした。 |