何かを言おうとする。
すると口の中に無数の棘がチクリと刺さり、結局言葉は吐き出せずまた心の中にわだかまる。
気づいたら掴んでいた服の裾は、自分の意志ではない。
無意識にあなたを振り返ってしまうのも、自分の意志ではない。
そう、これは野薔薇の蔓の仕業。
無作法に伸び制御の効かなくなった蔓が気を狂わせてしまっただけ。
必死に自分に言い聞かせて、また、野薔薇の棘を飲む。
そして、たまにその棘を舐め合っては満たされた気持ちになる。
心の奥底に隠した本音に気づかれませんように。
そう思いながら今日もまた、口の中に棘が刺さっていく。